2021年9月20日月曜日

Bill's Brothers Stratocaster 解体新書 - Bill's Brothers Stratocaster Analysis.

前回紹介したBill’s Brothers Stratocaster。

ネットで調べてもほとんど情報がない謎のギターです(笑)。
分かっているのは30年ほど前にモリダイラが楽器が製造・販売したってことくらい。

なのでこのギターをリペアするにあたり、現物を色々と細かく調査・測定してみました。

ちなみに今回調べるのに役立ったのが、私の愛読書「FENDER|STRATOCASTER」。

この本は54年から68年までの実物写真や年代毎の違い、各パーツの細かな仕様の他、メンテナンス方法まで載っていて非常に助かる一冊です。

ボディ

  • ボディー:アルダー
  • 塗装:極薄ウレタン
  • ザクリ:S-S-S用

コンターが深く、またキャビティーの形から60年代初期のモデルをベースにしていると思われます。

塗装は木目に合わせて波打つくらい薄い塗装。
元々こうだったのか経年で変化したのかは不明です。

ザクリはちゃんとシングル・コイル・ピックアップ3列用でした。
ここは手を抜いていないですね。

ネック

  • ネック:メイプル
  • 指板:ローズ・ウッド
  • 貼り:スラブ・ボード(フラット貼り)
  • ネック接続:4点止め
  • ナット幅:43mm
  • フレット数:21フレット
  • フレット:2mm幅・1mm高のビンテージ・タイプ(スモール・フレット)
  • ネック・プロファイル:1969 Uシェイプ

30年前のギターなので、フレットはビンテージ・タイプのスモール・フレットです。
今はミディアム・ジャンボやナロー・トールといったタイプが主流ですが、それらに比べると低く薄いフレットで時代を感じます(笑)。

ネックの握りは実測してこれで調べたところ、「1969 Uシェイプ」に近似しています。
手が小さめな私には非常に握りやすいネックです。

ストラトキャスターのネックはCシェイプが主流ですが、UシェイプとCシェイプに劇的な差はありません。

違いは「肩」(ネックと指板の接着部分)の落ち方ですね。
断面で見ると、Cシェイプはいきなり薄くなっていくのに対して、Uシェイプは微妙な太さを残したあとに薄くなっていきます。

指板の貼りがスラブ・ボードなので、ボディー同様60年代初期のモデルをベースにしていると思われます。

ハードウェア

  • ペグ:クルーソン・タイプ
  • スプリング:3本
  • ブリッジ:6点止め
  • サドル:ベントスチール
  • 弦ピッチ:11.3mm
  • ピック・ガード:白・黒・白の3P 11点止め
  • ストリング・ガイド:羽根型(スペーサーあり)2個

ペグはクルーソン・タイプですが、30年経っているにも関わらず非常にスムースでちょっとビックリ。

ブリッジは6点止め、サドルもベント・スチールというビンテージ仕様です。

弦ピッチは11.3㎜とこちらもビンテージ仕様。
弦ピッチとは弾くところの弦の間隔で、フェンダーには複数の弦ピッチがあります。

  • ビンテージ仕様の11.3mm
  • モダン仕様の10.5㎜
  • フェンダー・ジャパン仕様の10.8㎜

最近は10.8㎜や10.5㎜が主流で、11.3㎜はビンテージ仕様の特定機種のみとなっています。
それぞれにメリット、デメリットがありますが、日本人には10.8㎜がベターかなぁ。

ピック・ガードは3プライの11点止めで、ネジの位置と仕様からやはり60年代初期をモデルにしていますね。

ストリングガイドは2個ですが、本家が正式に2個になるのは72年のラージ・ヘッド・モデルからなので、これは独自の対応ですね。

電装

  • スイッチ:国産ボックスタイプの5WAY(YM-50)
  • ポット:250kΩ Aカーブ 16mmタイプ
  • トーンキャパシタ:フィルムコンデンサ 0.022μF
  • ピックアップ:シングルコイル 8.5kΩ(全て)
  • ポールピース間隔:52㎜(1弦~6弦間)

スイッチは今も販売されているYM-50。
クローズドタイプで切り替え時の感触も良く、私は好きなスイッチです。

ポットはシングルコイル用としては標準の250kΩですが、大きさが16㎜と小型なのでコストカットですね(涙)。

トーン用のキャパシタ(コンデンサ)は安価なフィルム・コンデンサで容量が0.022μF。
一般的にストラトモデルには0.047μFを使用するのでちょっと意外です。

ピックアップは8.5kΩという標準的なもの。

あとポールピース間隔は52mmとこちらも標準。
ピックアップは3個とも同じものでした。

細かく見た感想

全体的な造りはかなり良いと思います。

塗装も薄めだし、ザクリも綺麗。
ただし電装系はやはりコストの関係で、ちょっとグレードの低いものが使われているかなというところです。

あとハンダ付けは非常に雑でした(笑)。

さて次回はいよいよリペア編です。
パーツの清掃や部品の交換などをやって「今も充分に使える」状態にしますのでお楽しみに。

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