前回紹介したBill’s Brothers Stratocaster。
ネットで調べてもほとんど情報がない謎のギターです(笑)。
分かっているのは30年ほど前にモリダイラが楽器が製造・販売したってことくらい。
なのでこのギターをリペアするにあたり、現物を色々と細かく調査・測定してみました。
ちなみに今回調べるのに役立ったのが、私の愛読書「FENDER|STRATOCASTER」。
この本は54年から68年までの実物写真や年代毎の違い、各パーツの細かな仕様の他、メンテナンス方法まで載っていて非常に助かる一冊です。
ボディ
- ボディー:アルダー
- 塗装:極薄ウレタン
- ザクリ:S-S-S用
コンターが深く、またキャビティーの形から60年代初期のモデルをベースにしていると思われます。
塗装は木目に合わせて波打つくらい薄い塗装。
元々こうだったのか経年で変化したのかは不明です。
ザクリはちゃんとシングル・コイル・ピックアップ3列用でした。
ここは手を抜いていないですね。
ネック
- ネック:メイプル
- 指板:ローズ・ウッド
- 貼り:スラブ・ボード(フラット貼り)
- ネック接続:4点止め
- ナット幅:43mm
- フレット数:21フレット
- フレット:2mm幅・1mm高のビンテージ・タイプ(スモール・フレット)
- ネック・プロファイル:1969 Uシェイプ
30年前のギターなので、フレットはビンテージ・タイプのスモール・フレットです。
今はミディアム・ジャンボやナロー・トールといったタイプが主流ですが、それらに比べると低く薄いフレットで時代を感じます(笑)。
ネックの握りは実測してこれで調べたところ、「1969 Uシェイプ」に近似しています。
手が小さめな私には非常に握りやすいネックです。
ストラトキャスターのネックはCシェイプが主流ですが、UシェイプとCシェイプに劇的な差はありません。
違いは「肩」(ネックと指板の接着部分)の落ち方ですね。
断面で見ると、Cシェイプはいきなり薄くなっていくのに対して、Uシェイプは微妙な太さを残したあとに薄くなっていきます。
指板の貼りがスラブ・ボードなので、ボディー同様60年代初期のモデルをベースにしていると思われます。
ハードウェア
- ペグ:クルーソン・タイプ
- スプリング:3本
- ブリッジ:6点止め
- サドル:ベントスチール
- 弦ピッチ:11.3mm
- ピック・ガード:白・黒・白の3P 11点止め
- ストリング・ガイド:羽根型(スペーサーあり)2個
ペグはクルーソン・タイプですが、30年経っているにも関わらず非常にスムースでちょっとビックリ。
ブリッジは6点止め、サドルもベント・スチールというビンテージ仕様です。
弦ピッチは11.3㎜とこちらもビンテージ仕様。
弦ピッチとは弾くところの弦の間隔で、フェンダーには複数の弦ピッチがあります。
- ビンテージ仕様の11.3mm
- モダン仕様の10.5㎜
- フェンダー・ジャパン仕様の10.8㎜
最近は10.8㎜や10.5㎜が主流で、11.3㎜はビンテージ仕様の特定機種のみとなっています。
それぞれにメリット、デメリットがありますが、日本人には10.8㎜がベターかなぁ。
ピック・ガードは3プライの11点止めで、ネジの位置と仕様からやはり60年代初期をモデルにしていますね。
ストリングガイドは2個ですが、本家が正式に2個になるのは72年のラージ・ヘッド・モデルからなので、これは独自の対応ですね。
電装
- スイッチ:国産ボックスタイプの5WAY(YM-50)
- ポット:250kΩ Aカーブ 16mmタイプ
- トーンキャパシタ:フィルムコンデンサ 0.022μF
- ピックアップ:シングルコイル 8.5kΩ(全て)
- ポールピース間隔:52㎜(1弦~6弦間)
スイッチは今も販売されているYM-50。
クローズドタイプで切り替え時の感触も良く、私は好きなスイッチです。
ポットはシングルコイル用としては標準の250kΩですが、大きさが16㎜と小型なのでコストカットですね(涙)。
トーン用のキャパシタ(コンデンサ)は安価なフィルム・コンデンサで容量が0.022μF。
一般的にストラトモデルには0.047μFを使用するのでちょっと意外です。
ピックアップは8.5kΩという標準的なもの。
あとポールピース間隔は52mmとこちらも標準。
ピックアップは3個とも同じものでした。
細かく見た感想
全体的な造りはかなり良いと思います。
塗装も薄めだし、ザクリも綺麗。
ただし電装系はやはりコストの関係で、ちょっとグレードの低いものが使われているかなというところです。
あとハンダ付けは非常に雑でした(笑)。
さて次回はいよいよリペア編です。
パーツの清掃や部品の交換などをやって「今も充分に使える」状態にしますのでお楽しみに。
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